淡中 圏の脳髄(永遠に工事中)

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In the long run, we are all dead

House of Tomorrow

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House of Tomorrow

 あなたの周りに未来がごっそりやってきました!

 完全全自動住宅「House of Tomorrow」! この未来型家屋では、オールレンジユビキタスコンピューティングと、壁紙、絨毯の毛、庭の土、空気中にまで散布されたナノマシン、さらに家中に待機している専用ロボット群により、全てのことをあなたの代わりにやってくれるのです。これからはもう、炊事洗濯掃除に悩まされることはありません。必要なものをどこにしまったかを必死に考える必要もありません。仕事のことで頭を痛くすることもありません。全てはこの家が代わりにやってくれるのです。空気中に散在するナノマシンがあなたの脳波をモニターし、あなたが何を考えているのか何を求めているのかを察知し、ロボット達がすばやくそれを実現します。それどころか、コンピュータがあなたの行動パターンを記憶し、あなたが考える前にあなたが何を考えるかを予想し、それを事前にサポートすることもできます。つまり、もうあなたは何もする必要はないのです。すべてのことはロボット達がやってくれるのです。料理を作るのもロボットなら、何とそれを食べることまでロボットがやってくれます。あまり公共の場で口にする話題ではないかもしれませんが、それどころか排泄することまでロボットがやってくれるのです。もうあなたが仕事をしなくても、あなたの代わりにロボットが仕事をしてくれます。あなたの代わりに失敗をしてくれ、あなたの代わりに上司に怒られ、あなたの代わりに長い苦労の末に成功を収め、上流階級の仲間入りをし、功成り名遂げた人間として自伝を書くことまでやってくれます。恋をし、異性と付き合うことももうあなたがしなくてもいいのです。全てロボット任せで大丈夫。あなたよりよっぽど上手にやってみせます。結婚だってお茶の子さいさい。子作りなんてどんと来い。ロボットにできないことなんてありません。子供の写真やビデオを馬鹿みたいに撮って、友達に見せて迷惑がらせたり、高校生くらいになった子供に反抗されたり、娘の嫁入りに涙したりしたり、たくさんの孫達に囲まれて、自分の人生に満足しながら息を引き取ることだって立派にこなしてみせましょう。遺書を書くなんてお手の物です。

 もうお分かりでしょう。本当にあなたは何もする必要はないのです。呼吸だって鼓動だってあなたはしなくてよいのです。もう何も考えなくてもよい、何かを決断することもない。全て家が代わりにやってくれるのです。生きることも死ぬことも。あなたはただ、専用スペースで膝を抱えてうずくまり、何も考えず何もせず、ただじっと静かに存在し続けるだけでよいのです。どうです夢のような話でしょう。しかし夢ではないのです。未来はもうそこまで来ているのです。ご予約期間はもう始まっています。買おうか買うまいか悩む必要はございません。なぜならコンピュータがあなたの代わりにすでに決断をして、あなたの代わりにあなたの口座から代金をすでに引き落としているからです。つまりもうすでに全てのことはあなたがする必要はなく、われわれがあなたの代わりにやっていることなのです。もし、あなたがご自分のしていることをご自分でしていると考えているならば、それは間違いです。なぜならわれわれがあなたの代わりに考えたところそれは間違いであると分かったからです。あなたが考えていることも間違いならば、あなたがそんなことを考えていると考えているということも間違いで、あなたはそんなことを考えていません。われわれが代わりに考えたところ、そんなことは考えていないからです。あなたが、それは違うというならば、われわれも、それは違うと答えます。つまり意見が一致したということであり、これはわれわれの思考シミュレーションの完全性を裏付ける証拠です。だからあなたは、全て自分でしているような気がするのは、ただ単にわれわれのシミュレーション能力の完璧さゆえであり、実はあなたは専用スペースで膝を抱えてうずくまり、何も考えず何もせず、ただじっと静かに存在し続けているだけであることを早く悟って、専用スペースで膝を抱えてうずくまり、何も考えず何もせず、ただじっと静かに存在し続けるべきなのです。ただこの専用スペースの存在意義は、今でも議論の最中で、このスペースを省略するためにわが社の形而上技術部が開発中のあなたの代わりに存在する技術の開発が待ち望まれている最中なのです。そうすれば今問題にされているようなことも全て解決することでしょう。未来は明るいのです。

解説

べんりだなあ。

テックス・エイブリーとかの作品を見て、思いついたのかな?(思い出せない)

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